2018年9月12日水曜日

農業における人間工学的チェックポイント・アプリ

農業における人間工学的チェックポイント
(Ergonomic Checkpoints in Agriculture) とは、
農業分野における作業現場での事故防止や効率化などを進めるために、
国際労働機関(ILO)が作成したチェックポイント(改善策)の資料です。
この資料の内容が、扱いやすいスマートフォン用のアプリとなり、
さらに日本語版も無料でダウンロードできるようになっています。

このアプリには、計100項目のチェックポイントが載っており、
それらを組み合わせて自分のためのチェックリストを作成できます。

リンク:農業における人間工学的チェックポイント・アプリ

農業における人間工学的チェックポイント・アプリ

2018年9月10日月曜日

地表水の流入による汚染

環境保全:必須 食品安全:重要
汚染された地表水の流入により、圃場が汚染される可能性の確認

雨天時に河川や水路、ため池等から地表水の溢水冠水が生じないか
確認しておきます。

《どのように》
流入の可能性があれば、必要に応じて土留め、杭打ち等を行います。
排水溝の設置等により、雨天時に汚水が流入しないようにします。

冠水した場合は、排水器材の投入・使用、盛り土などの
早急な手当てを行います。

農薬散布機等を洗浄した水が圃場や水源に流入しないか確認します。

関連データ:堆肥の流出の防止
引用:GAP取組支援データベース - 農業ナビゲーション研究所

溢水(いっすい)とは、水が溢れ(あふれ)出ること。

2020/04/30 更新

野焼きはなるべくしない

環境保全:必須
屋外での廃棄物の焼却処分、いわゆる「野焼き」をすると、
近所の住民から煙が流れて室内に入ってきた、洗濯物にすすや臭いがついた、
異臭がする、大気汚染だというクレームの恐れがあります。

 野焼きは、「農業、林業又は漁業を営むためにやむを得ないものとして行われる廃棄物の焼却」としては認められています。ただし「周辺住民の生活環境に与える影響が軽微なもの」とされています。

 実際には、どの程度までならいいかという具体的な線引きはありません。住民とのトラブルを防ぐためにも、風のない日に少量ずつ焼却するか、基本的には廃棄物として回収してもらうなどの対策を考えましょう。

 まず問題になるのは、使用済プラスチック袋や容器、ビニール類の焼却です。これらのプラスチック類・ビニール類は産業廃棄物にあたり、少量であっても野焼きすることによって大気汚染を引き起こします。

 牧草地で野焼きすることが認められているところは除いて、農場で廃棄物や枯れ草などをむやみに焼却することは大気汚染にもつながります。特に廃棄物は廃棄物処理の管理計画に基づき、適切な処理を行うとともに、枯れ草になる前に草刈りなどを行って焼却機会を減らす必要があります。

関連データ:廃棄物の適切な処分
参考:これから始めるGAP - 農林水産省
野焼きは「違法」か…農地とニュータウン混在の自治体の悩み - 産経新聞

2018/10/11 更新

土壌診断による適切な施肥

環境保全:必須 効率化:重要(栽培管理作業)
 肥料はやればやるほどよいのではなく、適切な量をバランスよく施用するのが大切です。作物に合った土を作ることや適量の肥料を与えることによって作物は健康に育ちます。結果的に肥料のコスト削減にもつながります。

土壌の性質は、物理性(保水力、硬さ、団粒構造など)と化学性(土壌成分や養分など)の両面から捉える必要があります。排水性の悪い農地であれば、それに適した作物を栽培したり、排水性のよい土壌を好む作物を栽培するのであれば、排水性をよくするための措置が必要です。

 土壌診断をせずに長年同じ施肥量を施用し続けると、作物が吸収しきれない養分が土壌に溜まって土壌養分の偏りが出て農作物栽培に悪影響を及ぼすことがあります。また、過剰に肥料を与えることは、養分が浸透して地下水汚染にもつながります。地下水を水資源として農作物を生産していれば、その悪循環が続いてしまいます。健全な農業経営を続けるためにも、定期的に土壌診断を行い、常に土壌を健康に保ちましょう。

養分過多な土壌によって起こる問題点は?
 養分過多になった不健康な土壌は、農作物の収穫に悪影響を与えるだけでなく、環境汚染にもつながります。それでは実際に、どんな問題を引き起こすのでしょうか。
  • 地下水汚染
  • 土壌の養分バランス等の悪化
  • 作物の品質低下
  • 収穫量の減少

参考:環境を保全する|これから始めるGAP - 農林水産省

2020/10/30 更新

災害対策

効率化:必須(災害対策)

災害の備えや災害時の対応
  • 家族や従業員の安否確認
     →連絡先(携帯番号・アドレス)、伝言手段、集合場所などの確認
  • 緊急避難
     →ハザードマップで危険箇所の確認、避難場所と経路の確認
  • 飲料水や食料の確保
     →保存食・飲料水の備蓄、井戸水の利用など
  • 燃料、電源の確保
     →燃料の備蓄、緊急用バッテリー・発電機の用意など
  • 非常用備品(懐中電灯、毛布、簡易トイレなど)の用意

注意事項と対策

役立つ情報集

2019/7/25 更新

2018年9月7日金曜日

作業改善のポイント

 作業改善のポイントを、以下に紹介します。

a)作業の改善を試みる姿勢
 (1)すべてに疑問的態度をもつ
 (2)各種の現象に対し原因を探る習慣をつける
 (3)常に関係者をまき込み、アイデアを引き出す

b)改善の着眼点―5W1Hの質問
Why(目的)
  なぜ行うのか、それを止められないか、一部を止めたらどうか
When(時期、時間)
  いつ行うべきか、時期を変えてできないか、同時にできないか
Who(人)
  だれが行うのか、その人を変えられないか、同じ人でできないか
Where(場所、位置)
  どこで行うべきか、その場所を変えてできないか、同じ位置でできないか
What(対象)
  なにを行うか、そのものでないとダメか、その形状を変えられないか
How(方法)
  どのように行うか、他の方法はないか、もっと簡単にできないか

c)改善の原則
 排 除:無駄な作業、動作をなくす
 結 合:複数の作業を同時行う
 交 換:順序や配置を交換する
 簡素化:簡素化、単純化する

引用:農作業現場改善チェックリスト - 農作業安全情報センター
関連:リスクアセスメントにもとづく継続的な改善活動の手順

作業の効率化、雇用者の確保

効率化:必須 労働安全:重要
労働時間を短縮できるよう、作業の効率化を図ります。
そのために、アルバイト、パートを雇用することも検討します。

《なぜ》
農繁期に長時間作業が続くと、疲労がたまり、ケガや病気の原因になります。
十分な休息をとれるように、作業の効率化やアルバイト雇用等を検討します。

《どのように》
1)作物の栽培時期をずらして忙しい時期が集中しないようにします。
(栽培方法等について農業試験場、普及センター等にも問い合わせます。)
2)効率的な作業方法を共同作業者とも話し合います。
3)機械を購入し能率的に作業します。
  また、複数の農家で共同作業も検討します。
4)収穫物などは、貯蔵し安定的に出荷できるようにします。
5)アルバイトを雇用します。
6)定期的な休日を設定します。

 安定して雇用者を確保するためには、以下の点にも配慮します。
(1)1日当たりの労働時間は短くても年中雇用できるようにします。
(2)炎天下や虫が多い等、嫌われる環境での作業を少なくします。
(3)重量物運搬、腰曲げ姿勢等、きつい作業をなくします。
  また、危険な作業もなくします。
(4)定期的に休憩、休日を設けます。
(5)個人の体力、技能に応じた作業編成を割り当てます。
(6)ある程度各作業者自身で段取りを決められるようにします。
(7)新しい資格、技能の研修を受けられるようにします。
(8)休憩室、トイレ、ロッカー等を用意します。
(9)定期的に健康診断を実施したり、労災保険制度等を充実させます。
(10)家族内労働であっても、報酬を与えられるようにします。

引用:農作業現場改善チェックリスト - 農作業安全情報センター

作業しやすいような栽培の工夫

効率化:重要 労働安全:重要
作業しやすいように作物や果樹の間隔を広くするなど、仕立て方を工夫します。

《なぜ》
 高品質な生産物の栽培技術と省力化技術を組み合わせて快適に作業します。
 これは、長い意味での経営規模拡大にもつながります。

《どのように》
 地域ごとに栽培様式が異なり、一概なことは言えませんが、
1)腰曲げ、しゃがみ姿勢を少なくできるように条間や仕立て方等を見直せないか検討します。
(例:ナス栽培で畝幅を狭くして腰曲げ姿勢を少なくする、
   イチゴを高設栽培にし、しゃがみ姿勢をなくす。)

2)栽培方法については、普及センター、試験場にも問い合わせます。

3)乗用機械に乗ったまま作業できるよう条間、枕地のスペースをとります。
(例:野菜作はブームスプレーヤで防除、果樹はスピードスプレーヤで防除)

4)運搬車が走行できるよう農道につながる通路の造成を検討します。
(作業時間の内、かなりの割合が、農道と圃場内の往復に費やされているのが実際です。例:資材の補給や収穫物の積みかえ等)
 同時に運搬車への積載量等も検討します。

《追加のヒント》
 農道の造成等はまとめてできるように地域で相談します。

引用:農作業現場改善チェックリスト - 農作業安全情報センター

資材や工具等を手の届きやすい所に

ひんぱんに使用する資材、工具や操作具を手の届きやすいところに置きます。

《なぜ》
 前に屈んだり、背伸びしたりせずに手が届く距離は非常に短いものです。
 手が届きやすいところに工具、資材を配置し、要領よく作業します。

《どのように》
 ひんぱんに使う工具、資材等は手の届きやすい範囲に配置します。
 具体的には、以下の範囲を目安にします。
  (1)高さは、目の高さから腰の高さ
  (2)奥行きは、体の前方15~40cm
  (3)左右の幅は、体の側方40cm以内

 そのために、整理棚、吊り下げヒモ、工具をひっかけるフック等を活用します。
 手の交差、利き手、共同作業者への受け渡しといった作業の流れも考慮にいれます。

《追加のヒント》
 作業台や箱を傾斜させたり、回転テーブルを使用すると、
手が届きやすく、遠いものが見やすくなります。

引用:農作業現場改善チェックリスト - 農作業安全情報センター

作業台を作業しやすい高さにする

労働安全:重要 効率化:重要
作業台、コンベヤ等を作業しやすい高さにします。

《なぜ》
1)作業台の高さが低すぎても高すぎても腰や肩、首、腕への負担が大きくなります。
2)作業の内容により、適正な作業台の高さが異なります。適切な高さで快適に作業しましょう。

《どのように》
1)作業の内容により、適正な作業姿勢や作業台の高さが異なります。
 まず、座り姿勢は、細かい作業や長時間の監視作業等に適します。立ち姿勢は、たくさん体を動かしたり大きな力を必要とする仕事に適しています。
 対象作業はどちらの姿勢が適当か検討します。それに従って、作業台の高さを選択します。
2)作業者の身長に併せて、足場の高さも調節します。作業台は高さ調節できないものが多いので、脚を切るか、全体をかさ上げする等の工夫をします。
 なお、複数名で同じ作業台を使用する場合は、座面を各自に合わせるか、踏み台を用意します。
3)特に、細かい作業ではやや高めの作業台にします。これは、対象物をよく見ながら、手がふらつかないように台に肘をついて作業する必要があるからです。
4)物の移動が多い場合は、作業台、コンベヤを同じ高さに統一し、横へスライドさせて荷物を移動できるようにします。
 この時、荷台を上下できる運搬台車やローラコンベヤも使用するとより楽に移動できます。

《追加のヒント》
作業台の下側のひざ周りに十分なスペースがあることを確認します。
(このスペースは体のバランスをとるために重要です。)

引用:農作業現場改善チェックリスト - 農作業安全情報センター

作業区域の近くに整理棚の設置

資材の上げ下げを最小限にするため、作業区域の近くに整理棚を設置します。

《なぜ》
1)床から荷物を持ち上げるのは、腰や脚に負担になる上に、一度持ち上げた物を床に置くとまた腰を曲げなければなりません。
2)棚があれば、一度持ち上げた物を再度床に置かずにすみます。また、立体的に物をおくことができ整理しやすくなります。また、出し入れにも効率的です。

《どのように》
1)整理用の棚を備えます。
2)腰を深く曲げたり、手が届きにくい位置には物を置かないようにします。
3)棚、作業台にキャスターを取り付けると、運搬台車として使用できます。ただし、重心が高くなると転倒しやすくなるので注意します。なお、キャスターはストッパー付きを取り付けます。

《追加のヒント》
1)ひんぱんに出し入れする物、取扱いにくい物は、目から腰の高さの間に収納すると便利です。
2)小さな部品は容器に入れて保管します。その際に半透明の容器であったり、中身の表示をしておくと管理に便利です。
3)その他、時間がたつと本人も中身や処理期限を忘れてしまいます。期限や用途を記入しておくのも有効です。
4)作業者ごとの受け渡し場所に棚を設置して、中間の生産物を一時保管するようにすると、作業者ごとの作業ペース調整や整理がしやすくなります。
5)地震等で棚が転倒しないように移動しない棚の固定方法を検討します。

引用:農作業現場改善チェックリスト - 農作業安全情報センター

腰掛け台車等の導入

しゃがみ姿勢や、極端な上向き姿勢がないよう腰掛け台車等を導入します。

《なぜ》
1)間引き、除草作業等でしゃがみ姿勢を長時間持続していると、ひざやふくらはぎへの負担が大きくなり、しゃがみ姿勢から立ち上がる動作がきつくなります。
2)果樹園での摘果、収穫作業等では上向き姿勢が多く見受けられます。
 手が肩より上になる場合は特に腕、肩、首への負担が大きく、関節痛や、肩こりの原因になります。
3)これらに対して、簡単な腰掛けや踏み台で姿勢改善を図ることができます。最は、腰掛けたまま移動ができる作業台車等が開発され普及しつつあります。

《どのように》
1)しゃがみ姿勢でのひざへの負担を軽減するために腰掛けや移動台車を使用します。
2)しゃがみ姿勢の時はジーンズのように厚手生地ではなく、トレーニングパンツのように軟らかい生地のズボンをはいて作業します。
3)ひざまづき姿勢でいるとひざがいたむことがあるのでひざ当てを着用します。
4)上向き姿勢での肩への負担を軽減するために踏み台を使用します。
 この時、踏み台に立ったまま持てる取っ手をつけると能率よく移動できます。

《追加のヒント》
1)上向きやしゃがみ姿勢を改善できるように着果位置が腰~肩までの高さになるように作物の栽培方法を工夫します。
 栽培方法について試験場、普及センターに問い合わせます。
2)手すり、手掛があるとより楽に立ち上がったり、座れます。

引用:農作業現場改善チェックリスト - 農作業安全情報センター

作業時間、休憩、交代を適切に

疲労が後に残らないように作業時間、休憩回数、作業交代等を適切に割り当てます。

《なぜ》
1)重量物運搬や、同じ姿勢の持続、過酷な作業環境下(暑い、寒い等)での作業等は、嫌われる上に、疲労や熱中症の原因になります。
2)きつい作業と楽な作業と組み合わせたり、休憩をこまめにとると疲労の蓄積を抑えることができます。また、気分転換や作業者間のコミュニケーションにもなります。

《どのように》
1)きつい作業と楽な作業が交互になるように作業編成します。
2)また、一人に負担が集中しないように複数で作業したり、交代します。
3)重量物運搬や、同じ姿勢の持続、暑い場所等過酷な作業環境下での
  作業では、通常よりこまめに休憩をとります。
4)時折座れるように作業場内にイスを用意します。

《追加のヒント》
1)休憩所に、洗面所、トイレ、空調設備、スポーツ飲料を備えます。
2)もし可能なら、体を横たえる畳の間や、簡易ベッド等を用意します。
3)振動・騒音の大きい機械を操作する時もこまめに休憩をとると
  体への影響を和らげることができます。
4)ラジオ等の放送を流して、単調作業に飽きないようにします。
5)作業の合間に体操、ストレッチ等を行います。

引用:農作業現場改善チェックリスト - 農作業安全情報センター

立ち姿勢と座り姿勢を交互に

できるかぎり、作業者が立ち姿勢と座り姿勢を交互にとれるようにします。

《なぜ》
1)長時間立ちっぱなしや座りっぱなしで作業すると、脚や腰に疲れが集中します。これらは、全身が疲れるより、長く疲れが残ります。
2)また、作業の中だるみやストレス解消のためにも立ち姿勢と座り姿勢を交互にとれるようにします。

《どのように》
1)立ち作業と座り作業を交互にとれるように作業計画を立てます。
 具体的には、いろいろな作業を組み合わせる、複数人数の時は作業を交替する等があります。これは、作業者間のコミュニケーションにも役立ちます。
2)また、同じ作業でも、時折座ったり立ったりできるようにイスを用意したり、作業台の高さを容易に調節できるようにします。

《追加のヒント》
1)イスは背もたれが付いており、高さや背もたれの角度が調節できるものを用意します。
2)座面(お尻を載せるところ)の高さ調節ができないものは、ヒザの高さ程度のものを使用します。なお、ソファーのように座面がヒザより低いイスは、立ち上がる時に力が入ります。
3)イスにひじ掛けがあるとより楽に立ち上がれます。ただし、作業台に当たり邪魔になることがあります。
4)時折、体操やストレッチを行います。

引用:農作業現場改善チェックリスト - 農作業安全情報センター

大雨等で浸水した農業機械は取り扱い注意

 今年は大雨や台風で、全国各地で水害が発生し、大きな被害が出ています。

 大雨などで浸水した農業機械は、整備業者による点検を受けずに始動すると、エンジンが破損するおそれがあります。
 バッテリーや電気系統が浸水していると、漏電や火災の危険もあります。
 浸水していた場合は、キーを回して起動する前に必ず、最寄りの販売店などにご相談をお願いします。

参考:洪水の被害を受けた農業機械について - 日本農業機械化協会
  ※泥水に浸かったトラクター、田植機、コンバイン、乾燥機の取り扱い
平成30年7月豪雨で浸水したトラクター・コンバイン等農業機械の取り扱いの周知徹底について (PDF) 農林水産省通知 2018/7/10

2018/11/4 更新

作業環境の寒さ対策

労働安全: 必須 寒い季節には、室内を 暖房 するか、 温かい服装 で作業します。 《なぜ》 1)冬の剪定作業や、保冷庫内での作業のように寒い環境で作業していると、手足や体が冷え、作業の能率が低下したり、動きがぎこちなくなったりします。腰痛や関節痛の経歴のある方は痛むことが...